「うちの豆餅は、そんな風に作ってませんで!」
のっけから怒られてしまったのには訳があります。
事の発端はこうです。出町にある「ふたば」さんの豆餅のことを友人が「どうして、あのお餅は硬くならないんだろうか?」
昔から不思議に思っていたそうなのですが、実は私も同じ様に訝しげに思っておりました。
(これは何もふたばさんのお餅だけに関して言っているのではありません。普通の丸餅や伸し餅などに比べて大福・豆餅が柔らかいままであることの違いについて感じていただけです(笑))
「あれは、何か入ってるんちゃうやろか?」
「羽二重みたいに白玉粉を入れてたりして…」
「求肥みたいに小麦粉とか」
「そうそう…」
などと、今から考えたら冷や汗ものの会話をしていました。
その種明かしは後回しにして、先ずは豆餅の紹介を。
この有名なお菓子は、いまや京都を代表する名物になりましたが、歴史はそこまで古くなく、明治28年に初めて作られたそうです。
初代の出身地である石川県に伝わる神饌用の豆餅に餡を入れてはどうか、というこ発想こそが「今をときめく豆大福(豆餅)」の始まり、という訳です。
まず、その姿を見てみましょう。
取り粉のほとんどついていない餅肌の瑞々しさ、うっすらと透けて見える赤えんどうの艶っぽさ。
思わず見惚れてしまいそうになります。その姿を十二分に堪能したのなら、一気に喰らいつきます。(笑)
今までに食べられた方は、普通の豆大福と比べて餡が少ないことにお気づきでしょうか。
そう、これはあくまで「豆餅」であって豆大福ではないのです。
「餅が主役」と、ご主人の黒本さんはおっしゃいます。
上手に搗きあげた餅のうまさ、天日干しのあと軽く塩味をつけて炊き上げられた赤えんどうのふくよかな味。
これらを美味しく食べるための添え物が「こし餡」であって、刺身のわさび・生姜、おでんの辛子に当たるものなのだそうです。面白いですね。
こちらの豆餅では「こし餡」を使うのも添え物であるがため、餡の個性を主張させないため、なのだそうです。
(ちなみに、豆餅とは別に売られている大福では「つぶ餡」が入っています。)
餅、赤えんどう、餡、この三位一体のおいしさに舌鼓を打ちつつ、ご主人に最初の疑問を投げかけてみました。
「このお餅の柔らかさ、なんか入れてはるんですか? 例えば上新粉とか、白玉粉とか…」
その答えが冒頭のお言葉です。
もちろん怒ったはるわけではなく、笑いながらそう言われたのですが…
ポイントは二つ。
・良いもち米を使うこと
・しっかり搗くこと
こちらでは、もち米の最高峰と言われる「江州羽二重」という滋賀県産のものを使われています。
餅にした時の腰、粘り、旨味と三拍子揃った最上質のもち米を蒸しあげ、機械こねを経たのち、仕上げ用の餅つき機で搗いていきます。
この時、普通の丸餅や伸し餅の倍以上の時間をかけて搗くことによって、あの柔らかな餅が出来上がるのだそうです。汗顔の至りでした。
餅、豆、餡の三つのうち、どれに一番気を配るのですか? とお聞きしたところ、意外な答えがご主人の口から帰ってきました。
「豆です」
毎年お盆過ぎに赤えんどうを自ら天日干しされるそうなのですが、その時に夕立などがあると一年分の赤えんどうが水の泡になるそうです。家族、職人さん総出で暑い夏の日の中の作業、「空を見上げて神さんにお祈りしてますわ」だそうです。
さあ、では私もここらで出町まで行って、美味しい豆餅に熱いほうじ茶でも…と思ったら定休日でした…(笑)
さて、出町の「ふたば」さんには、普通の豆餅の他に、もう一つの豆餅があります。
それは「餡無し」の豆餅。
こし餡を包まずに、お豆さんが入った餅をそのまま丸めただけの豆餅です。
実は、これがまた旨い! 餡が無いわけですから、これに自分流の味付けをすることが出来ます。
きな粉で食べるも良し、黒蜜をかけて食べるのもまた一興。
甘いお菓子が苦手でも、これに焼き海苔を巻いて醤油で食べるのが大好き、という方もいらっしゃるそうです。
私が好きな食べ方は、餡無しを4つにちぎり、軽くお湯の中をくぐらしてきな粉をふりかけ、熱いうちに食べるというものです。
なかなか乙なものですよ。
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